動画担当者必読!古くて新しいHHH(スリーエイチ)戦略
Marketing
動画施策を成功させるためにはどのような動画戦略を立てるべきでしょうか。自社の求める成果を出すためには、動画施策の目的を明確化し、マーケティング施策とバランスの取れた動画戦略を立てることが重要です。
動画施策を一過性のもので終わらせないためのヒントが、Googleが2014年にコンテンツマーケティングに関して提唱したHHH(Hero, Hub, Help/ Hygiene)戦略フレームワークにあります。このフレームワーク自体は目新しい概念ではありませんが、単体ではなくマーケティングファネルと組み合わせて考えることで、動画施策とマーケティング施策全体を密接に組み立て、自社にとっての最適解に近づくことができます。
現在だけでなく将来にわたって、投資対効果を最大化し、動画施策をスケールアップさせていくために確認しておきたいポイントをご紹介いたします。
目次
1. HHH(スリーエイチ)戦略を元に分類した3種類の動画とは?
Hero動画
「Hero」動画は、幅広い認知を目的とした動画です。ブランドにフォーカスし、視聴者の感情を動かすような高品質な動画により、ブランド認知度や親しみやすさのアップや、視聴者とのより強い結びつきを狙うものです。例えば、NIKEの”Just Do It” キャンペーンや、AppleのiPhoneキャンペーンで見るような動画がこれにあたります。
Hub動画
「Hub」動画は、視聴者に自社サイトや自社メディアを繰り返し訪問してもらうためのものです。動画により、自社Webサイトのユーザー体験を向上させ、Webサイトをリソース化することが可能です。以下のような用途の動画がHub動画の例として挙げられます。
- インタビュー動画:業界のエキスパートやインフルエンサーのインタビュー。インタビューの中で好意的なコメントがもらえるとベストです
- 製品デモ&説明動画:既存顧客だけでなく、潜在顧客や見込み顧客にも自社製品・サービスのメリットをリアルな言葉で語れるので効果的です
- テスティモニアル動画:テスティモニアルとは、ある製品・サービスに対する消費者や識者の推奨意見のことです。自社製品・サービスがどのようにお客様の役に立ったかという興味深いストーリーをお客様自身の言葉で語っていただくことで説得力が増します
- カンファレンス・イベント動画:自社のカンファレンスやイベントがある度に録画し、簡潔に編集して活用すれば、自社Webサイトを繰り返し訪れてもらうのに便利な方法です
Help動画
「Help」動画は、検索ワードを狙ったものです。この場合は、検索結果の上位にランクされ、アクセスおよびコンバージョンを増加させることがゴールとなります。HHH戦略がはじめに提唱された際には「Hygiene」(衛生習慣)と呼ばれていましたが、現在は「Help」とも呼ばれています。視聴者の悩みや疑問に答えるべく、情報を整理して提示する動画という意味です。自社の業界における主要な検索ワードをカバーする動画により、自社のオウンドメディアに視聴者を誘導して、より深いつながりを持ってもらうのに有効です。
2. 動画施策の目的・ターゲット・実施範囲を決定しよう
動画施策もその他の施策と同様に、一般的なマーケティングファネルと関連づけて計画することが望ましいです。HHH戦略とマーケティングファネルを並べて考えると、どの種類の動画がマーケティングファネルのどのステージを対象としたものかが理解しやすくなります。
動画施策の目的・ターゲット・実施範囲を決定するために検討すべき項目を、動画の種類別に見ていきましょう。
Hero動画
このタイプの動画の効果を最大限に発揮させるには、クリエイティブとプロモーション戦略の両方を細部まで検討することが必要です。ターゲット層はマーケティングファネルの「認知」に当たるため、一番広くなるでしょう。
- 既存顧客が欲しているものは何か。ターゲットとなる視聴者を惹きつけるフックとなるのは何か
- 目を引く美しい動画のビジュアルも重要だが、それにも増して説得力がありクリエイティブなストーリーを語ることができるか
- 動画制作費用が膨れ上がることを避ける為、企業が動画制作会社にプロジェクト概要を的確に伝え、それが動画制作会社に確実に理解されているか
- プロモーション戦略の優先順位付けはできているか
- 適切なSNSを全て活用し、各SNSのベストプラクティスに従い動画を最適化できるか
Hub動画
このタイプの動画は、継続的に公開できて、自社を認識し信頼してもらえるような内容であることが重要です。ターゲット層はマーケティングファネルの「興味・関心」と「比較・検討」に当たるため、Hero動画の対象よりも絞り込まれます。
- 視聴者の感情を動かすことができるような内容か
- 興味を喚起し、きちんと情報を届けられるか
- 最新動向や技術情報など、視聴者の体験を向上させられる内容か
- 潜在顧客の購入を妨げている原因を解決できるか
- 製品やサービスを提案する動画の場合は、機能とベネフィットのバランスをとって訴求できるか
- 自社Webサイトへの再訪を促すために、定期的に動画を公開できるか(毎週水曜日公開、毎月1日公開など)
- どのSNSで動画を拡散するべきか
Help動画
このタイプの動画は、問題解決に役立つような内容であるかどうかが大切です。自社のSEOを向上できるか・分析改善が詳細にできるかもポイントになります。ターゲット層はマーケティングファネルの「購入/顧客維持」に当たるため、より具体的に絞られてきます。
- SEOを考慮し、取り組みの優先順位を上げるのに充分な検索ボリュームを持つキーワードは何か
- 動画テーマの関連キーワードが検索された際に、検索結果上位に表示されるための基本的なポイントとして、動画タイトルと内容はマッチしているか
- 視聴者一人ひとりに合わせたパーソナライズ動画にできるか。インタラクティブ動画のような、アクションの取れる動画にできるか
- 説明だけでなく、問題を解決して成功できるインサイトを与えることができるか
- どのSNSで動画を拡散するべきか
3. 動画施策の予算を策定しよう
それでは、目的・ターゲット・実施範囲の検討に関連する予算配分は、どのように決めるべきでしょうか?
動画施策で成果を出し、将来にわたって発展させていくためには、トライアル&エラーを繰り返しながら調整するのが最良のプロセスと言えます。なぜなら、商品・サービスの内容、ビジネス環境によって、施策の概要・目的に応じた戦略、顧客の興味関心・行動パターンは異なり、一概には言えないためです。ただし、その中でも分析すべきポイントがいくつかあります。
- 顧客は普段どのような媒体を見ているのか(デジタル/非デジタル、テレビ、SNSなど)。
- どのようなコンテンツを見ているのか。何に興味や注意を惹かれるのか
- 設定した目的を達成するために、一番効果的なのはHero、Hub、Help、どの種類の動画なのか
- HHH戦略の中で欠けていて補うべき部分はないか
- 動画施策のPDCAを回すために、施策を継続できる現実的な予算配分はどのようなものか
一般的にはHero動画は制作費用が高く、プロモーション費用も必要になることが多いため、予算が潤沢でない場合はまずHub/ Help動画施策から始め、これらの動画施策が軌道に乗った後にHero動画施策も実施すると良いでしょう。
4. 動画施策で成果を出すためのヒント
予算と規模の面から考えて、動画をいくつも制作し、PDCAサイクルを回して改善を重ねやすいのはHub動画やHelp動画だと言えるでしょう。また、マーケティングファネルにおいて、売上により近いHelp動画やHub動画に優先的に取り組みKPIを改善することで、動画施策全体をスケールアップさせていきやすくなります。常にインターネット上に資産として蓄積されるHub動画やHelp動画を充実させながら、視聴者の心を動かすHero動画によりマーケティングファネルに多くの新規ターゲットを取り込み、動画施策の成果を最大化させましょう。
- Hero動画:ストーリーを語り、視聴者の心を揺さぶることを目指しましょう。思わずシェアしたくなるような動画にするのも効果的です。拡散効果を高めるには、時事性・季節性や話題性のあるテーマに関連づけた動画制作を検討するのも良いでしょう。
- Hub動画:インタビュー動画・製品デモ動画など、どのような種類の動画があるとナーチャリング対象の潜在顧客・見込み客に喜ばれるかを調査し、制作しましょう。定期的に動画を増やしていけるように企画しましょう
- Help動画:自社Webサイトの競争力を高め、有用なリソースサイトに育てましょう。そのために、SEOを強化できるキーワードを含む動画を制作・公開しましょう。SEO強化には、動画に字幕をつけることも推奨されます。動画の詳細な分析を行い、視聴者の満足度を高めるための改善を続けましょう。
Hub動画やHelp動画に関しては、視聴者のエンゲージメント(関与)を高める方法として、双方向性を持たせるという手段を取ることも有効です。代表的なのが、パーソナライズ動画とインタラクティブ動画です。
- パーソナライズ動画:動画に視聴者の名前を入れたり、見込み客が次に何を見たいかを予測し、提供するといったものです。例えば、ウェビナーに申し込んだ見込み客に、近々開催するイベントの紹介動画をメールで送付するなどです。タイムリーで視聴者の興味に関連性のあるパーソナライズした動画を、一人ひとりのカスタマージャーニーに合わせて届けることで、見込み客がより早くブランドへの愛着を持つことにつながります。
- インタラクティブ動画:動画の中に選択肢を表示し選んでもらうことで、視聴者が関心のあるコンテンツに素早く辿り着けるようになります。これにより、企業と視聴者、一対一の対話を促進し、ユーザー体験・ロイヤルティを向上させることができるようになります。
いかがだったでしょうか。動画施策というと何から始めてよいか分からないと思われることもあるかもしれませんが、本記事を参考に、計画や振り返りを行っていただければ幸いです。